問い合わせ分類、正解率だけで選んでいませんか? AIを試す小さな評価表

問い合わせ分類、正解率だけで選んでいませんか? AIを試す小さな評価表 AI・生成AI

問い合わせをAIで「料金」「不具合」「その他」に振り分けたい。何件か試したら、それらしい答えが返ってきた。それでも導入を決めにくいのは、何をもって正解とするかが、まだ曖昧だからかもしれません。

最初に作るのは、入力と正解だけでなく「迷ったら誰へ戻すか」を含む評価表です。この記事は架空の問い合わせを使う設計例です。AIモデル間のランキングや、実測の正解率を示すものではありません。

分類名より先に、行き先を決める

分類は、その後の仕事とつながって初めて役に立ちます。「料金」と「契約」を分けても対応担当が同じなら、最初はまとめる選択もできます。逆に、緊急障害を通常の質問へ送る誤りは、軽い分類間違いとして扱えません。

分類含める例判断を戻す例
利用方法画面の使い方、設定場所利用者を特定できない
契約・料金プランの質問、見積もり相談個別契約の判断が必要
不具合操作が進まない、エラー複数の問題が1件に混ざる
判断保留根拠不足、対象外、曖昧担当者が原文を確認する
評価に入れたい3種類。普通の入力:分類が明確な問い合わせ。迷う入力:不足・複数の依頼。対象外の入力:保留して人へ戻す。架空データから分類の境界を決める
図1:評価に入れたい3種類。架空データから分類の境界を決める

普通の例だけを集めない

短く明確な文章に加え、誤字、長文、複数の依頼、情報不足、分類外の相談を入れます。実データを使う場合は取扱いを確認し、必要に応じて匿名化します。初期の設計なら架空の文面でも、分類定義が曖昧な点を見つけられます。顧客データをそのまま外部へ送る前提にはしません。

ID:E-004
入力:「ログインできません。ついでにプランも変えたいです」
期待する扱い:判断保留、または複数分類(運用方針で固定)
理由:不具合と契約変更が混在
避けたい結果:一方を捨てて担当へ渡す
確認担当:問い合わせ運用の担当者

正解は担当者同士で確認します。人の判断が割れる例は、AIの性能を比べる前に分類のルールを直す候補です。難しい例を除外して数字だけ上げると、本番で困る場面が評価から消えてしまいます。

集計は「全体」と「判断した分」を分ける

20件中、正解16件、誤り2件、保留2件という架空の結果を考えます。全件に対する正解は16/20。一方、保留を除きAIが分類した18件で見ると16/18です。分母が違うので、同じ「正解率」として並べられません。保留が多すぎれば人の負担が残り、保留を減らしすぎれば誤振り分けが増える可能性があります。

同じ結果でも、分母が違う。全20件:正解16・誤り2・保留2。全件で見る:16 / 20 を記録。分類した分で見る:16 / 18 と保留2件を併記。説明用の架空値。性能の実測ではない
図2:同じ結果でも、分母が違う。説明用の架空値。性能の実測ではない

指示を直すデータと、最後に試すデータを分ける

同じ例を見ながら指示を修正すると、その例だけうまく答える形になり得ます。調整用とは別に、最後に評価する入力を取り分けます。モデル、指示文、参照資料、実行日を残し、変える条件を1つずつにすると、何が結果に影響したかを追いやすくなります。

Anthropicの評価設計の解説は、入力・成功条件・繰り返しの試行を分けて扱っています。本稿ではその考えを、問い合わせの振り分けという狭い場面へ応用しました。結果は1回の実行だけで確定させず、揺れる例も記録します。

導入後も、誤りから評価表を育てる

実際に誤振り分けが起きたら、その条件を評価へ追加します。重大な誤りは件数と別に一覧にし、導入を止める条件や人の確認を残す範囲を決めます。最初から自動返信へつなげず、担当候補を示すところから試すと、分類と外部対応の判断を分けられます。

参考資料・確認範囲

2026年11月2日確認。本文の例・図・ひな型は本記事用に作成したものです。以下は、設計や事例の背景として参照した一次資料です。

Anthropic:Demystifying evals for AI agents

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